IRサイトのすべて:目的・制作ステップ・参考事例をわかりやすく解説

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企業が株主や投資家に対して財務状況など投資判断に必要な情報を提供するIR(Investor Relations)活動に注力するケースが増えています。IR活動を通じて、企業は「投資に値する魅力的な企業」であることを効果的にアピールすることが可能です。
その中でも、IRサイトは情報提供の中心的な役割を担います。株主や投資家に対して、的確で分かりやすい情報を伝えるために、戦略的で質の高いIRサイトの制作が欠かせません。

本記事では、IRサイトの概要、必要なコンテンツ、制作ポイントなどを詳しく解説します。「IRサイトの役割を知りたい」「投資家に選ばれるIRサイトを作りたい」とお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。

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目次
1: そもそもIRサイトとは?
2: IRのターゲット像
3: IRサイト制作のフロー
4: IRサイトに必須なコンテンツ
5: 第三者機関によるIRサイトの評価
6: IRサイトを制作する際のポイント
7: 参考にするべきIRサイト3選
8: まとめ
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1,そもそもIRサイトとは?

IR(Investor Relations)とは、企業が株主や投資家に向けて投資判断に必要な情報を提供する活動を指します。この活動を支えるためのWebサイトが「IRサイト」です。近年、多くの投資家が企業情報を収集する際にIRサイトを利用していることから、IRサイトの運営は企業のIR活動において欠かせない役割を果たしています。

情報が充実したIRサイトを制作することで、投資家に企業としての魅力を伝え、投資対象として選ばれる可能性が高まります。また、デザイン性よりも、情報がすっきりと整理され、分かりやすく伝わる構成が投資家に好まれる傾向があります。

2,IRのターゲット像

IRサイトのターゲットは主に以下の3つのカテゴリに分けられます。それぞれの特性を理解し、それに応じたコンテンツや設計をIRサイト制作に反映させることが重要です。

  • 機関投資家

機関投資家は、損害保険会社、生命保険会社、年金基金、金融機関など、大口資金を運用する投資家を指します。これらの投資家は、日本市場において上場企業株式の多くを保有し、市場に大きな影響力を持つ存在です。

特徴:
顧客資金を用いて株式や債券で運用するため、詳細な企業分析が求められます。     

IRサイトでの対応:
アナリストが利用しやすいよう、加工可能なデータ(Excel形式の財務データなど)のダウンロード機能を提供するのが効果的です。

  • 個人投資家

個人投資家は、企業に所属せずに自身の資金を運用する投資家を指します。デイトレーダーから積立投資を行う層まで、多様な目的やスタイルを持っています。特に、高齢者の割合が高いのが特徴です。

特徴:
自己判断で投資を行うため、使いやすさと情報の分かりやすさが重要です。株主優待を目的とした投資家も多く含まれます。

IRサイトでの対応:
高齢者でも見やすいフォントサイズや、直感的に操作できるナビゲーション設計を心がけましょう。

  • 海外投資家

海外投資家は、日本国外に居住する機関投資家や個人投資家を指します。日本市場における海外投資家のシェアは年々拡大しており、さらに増加する見込みです。

特徴:
言語や文化の違いから、日本の情報を正確に理解するためのサポートが必要です。

IRサイトでの対応:
多言語対応(英語をはじめ、主要市場の言語)を実施し、海外投資家にも理解しやすい情報提供を行いましょう。

3,IRサイト制作のフロー

1, 現状把握と目的の整理

最初のステップは現状の確認です。既にIRサイトを運営している場合は、現行サイトの課題を洗い出しましょう。この際、ユーザー視点(情報が見やすいか、使いやすいか)と、運用者視点(更新のしやすさ、セキュリティ対策)の両方から課題を考えることが重要です。

新規でIRサイトを立ち上げる場合には、ターゲットとなる投資家にどのような情報を伝えたいかを明確にし、サイトの方向性を具体的に定める必要があります。この段階での準備が、後の制作工程をスムーズに進める鍵となります。

2, 運用体制の構築

次に、継続的な情報更新を支える運用体制を構築します。IRサイトでは、財務情報や業績データ、投資家向けの最新ニュースを迅速かつ正確に公開することが求められます。そのため、情報発信をサポートする社内体制を整えるとともに、効率的に更新できるツール(例:CMS)を導入するのが効果的です。
また、更新頻度や担当者の役割分担を明確にすることで、長期的に運用しやすい基盤を作ることができます。

3, サイト設計

現状の課題や目標に基づき、IRサイトの設計を行います。設計段階では、ユーザーが求める情報にスムーズにアクセスできるよう、サイト全体の構造を整理し、使いやすさを追求することが重要です。
例えば、「情報が探しにくい」といった課題がある場合、ボタンやメニューの配置を工夫したり、導線を明確にするなどの解決策を取り入れます。ユーザー目線を忘れず、課題解決型の設計を目指しましょう。

4, デザイン・コーディング・システム設計

次に、サイトのデザインやシステム構築を進めます。IRサイトでは、視覚的な派手さよりも、情報を分かりやすく伝えるシンプルで機能的なデザインが好まれます。また、デザイン段階でユーザーが重要な情報に素早くアクセスできる導線を意識することが重要です。
システム構築では、運用の効率化を念頭に置き、CMSの導入などを検討します。これにより、スピーディーな更新が可能となり、情報の鮮度を保つことができます。

5, 公開と運用開始

完成したIRサイトを公開したら、運用フェーズに移行します。しかし、公開がゴールではありません。実際の運用を通じて課題を洗い出し、改善を繰り返すことで、サイトの完成度を高めていく必要があります。Google Analyticsというツールを用いることで簡単に情報取集することができますので、是非ご活用ください。以下の記事で詳しい内容を解説していますので、ぜひこちらも一緒にご覧ください。

さらに、株主や投資家へのアンケートを実施し、利便性や情報の充実度に関するフィードバックを収集することも有効です。このプロセスを繰り返すことで、IRサイトを常に進化させ、企業価値を効果的に伝えられるツールに育てることができます。

GA4(Google Analytics 4)とは?初期設定方法・導入方法を解説

4,IRサイトに必須なコンテンツ

ここでは、IRサイトを構成する上で欠かせない主要なコンテンツについてご紹介します。それぞれの役割と具体例を把握し、投資家にとって信頼性と魅力のあるサイトを構築しましょう。

  • 経営方針

経営方針は、企業の方向性や戦略を示し、投資家に未来への期待感を抱かせるための重要なコンテンツです。
例:
✓ 代表メッセージ
✓ 経営戦略
✓ コーポレートガバナンス
✓ マーケットデータ
✓ リスク情報

  • 会社情報

会社情報は、企業の存在意義や基本情報を伝えるコンテンツです。信頼を構築し、投資家に企業の全体像を理解してもらう役割を果たします。
例:
✓ 企業情報
✓ 事業内容
✓ 経営陣紹介
✓ 会社沿革
✓ グループ会社紹介

  • 株式情報

株式情報は、株式や配当に関する詳細を提供し、特に個人投資家にとって重要な関心事をカバーするコンテンツです。
例:
✓ 株価情報
✓ 株式状況
✓ 定款
✓ 株主総会情報
✓ アナリスト情報
✓ 配当金
✓ 社債・格付情報
✓ 電子公告

  • 財務/業績情報

財務/業績情報は、企業の実績や財務状態を視覚的かつ具体的に伝えるためのコンテンツです。透明性を重視し、投資家の信頼を獲得します。
例:
✓ 決算ハイライト
✓ キャッシュフロー計算書
✓ 損益計算書
✓ 貸借対照表
✓ チャートジェネレーター

  • ニュース

ニュースは、企業の最新情報やIR関連トピックスを発信するコンテンツです。タイムリーな情報更新が求められます。
例:
✓ プレスリリース
✓ IRニュース

  • IR資料

IR資料は、投資家が詳細に企業情報を確認できるように、開示書類や説明会資料を提供するコンテンツです。動画コンテンツの活用も有効です。
例:
✓ 決算短信
✓ 有価証券報告書
✓ 決算説明会資料
✓ 事業報告書・株主通信
✓ 統合報告書

5,第三者機関によるIRサイトの評価

これまでIRサイトに必要なコンテンツについてご紹介してきましたが、重要なのは、単に必要なコンテンツを掲載するだけではなく、どのようなIRサイトが高く評価されるかを意識して制作することです。また、他社の優れたIRサイトを参考にすることも、効果的なサイト作りに繋がります。

代表的なIRサイト評価ランキングとして、以下のものがあります:

・日興アイ・アール株式会社による「インターネットIR表彰」
・株式会社ブロードバンドセキュリティによる「ホームページ充実度ランキング」
・大和インベスター・リレーションズ株式会社による「Gomez(ゴメス)IRサイトランキング」

ここでは、特に「Gomez(ゴメス)IRサイトランキング」を例に、評価項目を紹介します。

  • ウェブサイトの使いやすさ
    ウェブサイト全体のユーザビリティを評価する項目です。情報が簡単に見つかるか、各コンテンツが視覚的にわかりやすく、使いやすいかどうか、さらにウェブ・アクセシビリティ基準に対応しているかも含まれます。情報が素早く、ストレスなくアクセスできる設計が求められます。
  • 財務・決算情報の充実度
    財務や決算に関する情報がどれだけ充実しているかを評価する項目です。具体的には、ディスクロージャ資料や決算説明会資料など、業績を中心とした定量的なデータがどれだけ網羅されているかが重要です。投資家にとって、これらの情報が分かりやすく整理されていることが求められます。
  • 企業・経営情報の充実度
    企業や経営に関連する情報の充実度を評価する項目です。会社概要や経営戦略、コーポレートガバナンス、サステナビリティに関する情報など、企業の定性的な情報がどれだけ詳細に伝えられているかが重要です。投資家に企業の価値観や方針を理解してもらうためのキーコンテンツです。
  • 情報開示の積極性・先進性
    単に基本的な情報を提供するだけでなく、一歩先を行く情報開示が求められます。個人投資家向け情報、英語による情報開示、動画や音声配信、ソーシャルメディアとの連携、スマートフォン対応など、コンテンツと機能面の両方において、積極的かつ先進的なアプローチが評価されます。(https://www.gomez.co.jp/ranking/ir/ より引用)

6,IRサイトを制作する際のポイント

前項の評価項目を踏まえ、IRサイトを効果的に制作するための具体的なポイントを解説します。

コンテンツを充実させる

IRサイトにおいて重要なのは、単に情報量を増やすことではなく、投資家が求める情報を的確に伝えることです。

  • 財務・業績情報に加えた将来性の訴求
    企業の好調な実績を示すだけでなく、「将来的にどのような企業を目指しているのか」「どのような事業を展開しているのか」といったビジョンやミッションを明確に伝えることが重要です。
  • 非財務情報の発信
    SDGs、CSR、ESG投資など、社会的責任や持続可能性に関する情報は、投資家が企業の将来性を判断するうえで重要視される項目です。これらの活動を積極的に発信することで、企業の価値をさらに高めることができます。
  • ターゲットごとのコンテンツ
    機関投資家、個人投資家、海外投資家など、異なるターゲットに合わせたコンテンツを用意することで、訴求力が大幅に向上します。それぞれのニーズに応じた情報提供を行いましょう。

ユーザビリティを意識した設計

IRサイトは情報量が多いため、ユーザーが迷わず情報にたどり着ける設計が必要です。

  • 導線の明確化
    情報が紛れないよう、カテゴリやメニューの構造を整理し、視覚的にわかりやすいナビゲーションを設計します。
  • 迅速な情報更新
    プレスリリースや決算関連情報など、タイムリーな更新が求められるIRサイトでは、CMS(コンテンツ管理システム)の導入が効果的です。特に、IR特化型のCMSを利用すると、EDINETやTDnetの情報を自動更新したり、財務データをグラフ化したりと、運用効率が大幅に向上します。CMSの選定に際しては、現在使用しているシステムとの相性を考慮しましょう。

技術の進化に対応する

現代情勢の移り変わりは非常に速いため、技術や社会の動きに適応したサイト運営がとても重要になってきます。

  • スマホ対応と多言語対応
    スマートフォン非対応のサイトは、それだけで投資家に不便を強いる可能性があります。レスポンシブデザインを採用し、すべてのデバイスで快適に利用できるようにすることが必須です。また、多言語対応を行い、海外投資家にも配慮した設計が求められます。
  • SNSや新機能の活用
    ソーシャルメディアとの連携や、ウェブカタログ化した株主通信やアニュアルレポートの掲載は、投資家の利便性向上に繋がります。技術やトレンドに積極的に対応し、常に最適な情報提供方法を模索しましょう。

7,参考にするべきIRサイト3選

以下にご紹介する3つの企業は、それぞれの特徴を活かしたIRサイトを構築しています。これからIRサイトを制作する方にとって、具体的な参考になる事例です。

ソフトバンク株式会社

電気通信事業を展開するソフトバンク株式会社のIRサイトでは、ユーザーが必要な情報に迅速にアクセスできる設計が特徴です。

特徴:
✓ メインビジュアルにはリアルタイムの株価情報や最新の説明会情報を掲載。
✓ キーワード検索機能を搭載しており、ユーザーが重要な情報を即座に見つけられる設計になっています。

このように、直感的なナビゲーションと情報の即時性を重視した構造は、多忙な投資家にとって非常に便利です。

伊藤忠商事株式会社

多岐にわたるビジネスを展開する総合商社、伊藤忠商事株式会社のIRサイトは、ターゲットに合わせたコンテンツの充実度が際立っています。

特徴:
✓ 株主や投資家向けに、社長のメッセージ動画や企業紹介動画を公開。
✓ 動画コンテンツを効果的に活用し、視覚的に分かりやすい情報提供を行っています。

このように、各ターゲットに向けた適切な情報発信により、企業の価値観やビジョンを直感的に伝える工夫がなされています。

ライフネット生命保険株式会社

生命保険を提供するライフネット生命保険株式会社のIRサイトは、シンプルで使いやすい設計が特徴です。

特徴:
✓ トップページは極めてシンプルなデザインで、必要な情報にすぐアクセスできる構成。
✓ ヘッダーやサイドメニューを活用し、情報の整理と迅速なアクセスを実現。

このようなユーザビリティを重視した設計は、幅広い層の投資家にとって利用しやすいサイトを実現しています。

8,まとめ

IRサイトは、投資家に対して必要な情報を正確かつ分かりやすく伝えるための重要なツールです。充実したIRサイトを構築することで、投資先として選ばれる企業となる可能性を高めることができます。
ブリッジコーポレーションでは、新規のIRサイト制作はもちろん、既存サイトのリニューアルやデザイン変更にも豊富な実績があります。投資家の信頼を得られるサイト作りを通じて、企業の価値をさらに高めるお手伝いをいたします。

「投資家に選ばれるIRサイトを制作したい」「既存のIRサイトをリニューアルしたい」とお考えの企業様は、ぜひこちらからお気軽にご相談ください。

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