GDPRの影響とは?Web担当者が押さえるべきチェックポイントを解説

GDPR(一般データ保護規則)は、欧州連合(EU)内で個人データの保護を強化するために制定された重要な規則です。特にWeb担当者にとっては、ユーザーの個人情報を取り扱う際に遵守すべき基準が厳格に定められています。本記事では、GDPRが企業のWeb運営に与える影響と、Web担当者が押さえるべきチェックポイントについて解説します。

目次

1:そもそもGDPRとは
2:日本の企業であってもGDPRの適応対象に!
 -対象となる企業は?
 -もし守らなければ、巨額の制裁金が課せられることも
3:Web担当者として確認すべきことは?
4:まとめ

1.そもそも「GDPR」とは?

GDPR(General Data Protection Regulation)とは、2018年5月25日にEUで施行された、個人情報に関わる新しい法律で、日本では「一般データ保護規則」と呼ばれています。この法律は、個人情報の取り扱いに関して厳格なルールを設け、個人のプライバシーを保護することを目的としています。

具体的に何が規制されるのか?

GDPRは、EEA(European Economic Area、欧州経済領域)内での「個人データ」の「処理」と「移転」を規制する法律です。以下では、GDPRにおける重要な定義について説明します。
※EEAとは:European Economic Areaの略で、EUに加え、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの3カ国を含む31カ国が対象となります。

1)個人データとは?

個人データとは、氏名、住所、メールアドレス、クレジットカード情報、パスポート情報など、いわゆる「個人情報」を指します。加えて、IPアドレスやCookie情報など、オンライン識別子も個人データに該当します。特に重要なのは、短期的にEEA域内に滞在する日本人の個人データもGDPRの対象となる点です。

2)処理とは?

「処理」とは、個人データに対して行われるすべての操作を指します。たとえば、メールアドレスの収集、クレジットカード情報の保存、顧客の連絡先変更、従業員の業務評価の確認など、個人データに関連するすべての行為が含まれます。これには、自動化されているかどうかに関係なく、あらゆる操作が含まれます。EEA域内で商品やサービスを提供する企業や従業員を雇用している企業では、日常的にこのような「処理」が行われています。

3)移転とは?

「移転」とは、個人データを含む文書を郵送や電子メールで送信したり、EEA域外の第三者に対して個人データを閲覧可能にする行為を指します。この移転には、企業がEEA域外の事業所にデータを送ることも含まれます。

2.日本の企業であってもGDPRの適応対象に!

GDPRはEUで定められた法律ですが、場合によっては日本企業も適用対象となります。

対象となる企業は?

  1. 日本からEUに向けて商品やサービスを提供している企業 日本の企業が直接、EEA域内に向けて個人データを収集する場合、EEA内に拠点がなくてもGDPRが適用されます。つまり、たとえ拠点がなくても、GDPRに準拠する必要があります。
  2. EUから個人データの処理を受託している企業 データセンター事業者やクラウドサービス提供企業など、EEA域内企業から個人データの処理を委託されている日本企業も、GDPRの対象に含まれます。


重要なのは、EUに拠点がなくてもGDPRが適用される場合があることです。たとえば、IPアドレスやCookie情報も個人データとして扱われるため、Google Analyticsなどのツールを使用する企業もGDPRの規制の対象になります。
自社サイトにGoogle Analyticsが導入されている場合、そのデータを直接担当者が確認していなくても、ツールを導入している時点でGDPRの対象となる可能性があることを理解する必要があります。

もし守らなければ、巨額の制裁金が課せられることも

Facebookの個人データ流出事件でも見られたように、GDPRに違反した場合、企業には数十億円規模の高額な制裁金が科される可能性があります。例えば、個人データを適切に処理しなかった場合や、個人データ移転の規定を守らなかった場合、罰金は最大で2000万ユーロ、または年間売上高の4%のいずれか高い金額となります。この2000万ユーロを1ユーロ=163円(2025年3月25日時点)で換算すると、約32億6000万円に達する計算です。

3.Web担当者として確認すべきことは?

EEA域内への商品やサービス提供を行っている企業に加え、EEA域内からCookie情報を取得しているすべての企業はGDPR対策を講じる必要があります。具体的な対応策としては、以下が挙げられます。

  • 収集するデータの用途と処理過程を明確に定義する
  • プライバシーポリシーやCookieポリシー、入力フォームページなどに分かりやすく説明を加える
  • GDPRに対応した体制を整え、ルールや機能が備わったツールや委託先を選定する
  • 訪問者から事前に明確な同意を得ること
  • 訪問者からのデータ確認や削除の要求に迅速に対応する
  • 目的達成後に不要なデータは速やかに削除する

また、個人データの取り扱いをサイト上で明示することは必須であり、訪問者に対して明確な同意通知を目立つ位置に配置することが求められます。例えば、Google Analyticsの導入をしている企業は、プライバシーポリシーでCookieの使用について通知する義務があります。GDPRの適用範囲は広いため、詳細については専門家への相談が推奨されます。

4.まとめ

欧州だけでなく、「中国サイバーセキュリティー法」や「APECの越境プライバシールール」など、世界中で個人データの保護規制が進行しています。インターネット上での個人情報取り扱いには、ますます慎重さが求められるようになっています。GDPRが2018年5月25日に施行されたにもかかわらず、対策がまだ完了していない企業もあるのではないでしょうか。

サイト運営面での対策としては、以下が挙げられます。

  • プライバシーポリシーの情報を最新に保つ
  • ユーザーにその更新内容をわかりやすく通知する機能を実装

これらは比較的負担が少なく、迅速に対応可能ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。
GDPR対策に限らず、この機会に自社のプライバシーポリシーや個人データ収集に関する説明が適切に行われているか、情報取り扱いに不備はないかを見直すことをお勧めいたします。

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